1. はじめに

「親が認知症になってしまったけど、相続の手続きはどうすればいいの?」
「親名義の不動産や預金があるけど、売却や引き出しはできるの?」

相続手続きは、相続人だけでなく、被相続人(亡くなる人)の意思も重要になります。
しかし、認知症が進行すると、親本人が意思決定できなくなり、相続手続きがスムーズに進まなくなるケースが多発しています。

今回は、認知症と相続手続きの関係について解説し、
認知症になると何が問題になるのか?
相続前に成年後見制度を活用する方法
後見人がいると相続手続きはどう変わるのか?
について、詳しく説明していきます。


2. 認知症になると相続手続きで何が問題になるのか?

親が認知症になると、以下のような問題が発生します。

🔹 相続手続きで起こる3つの問題
預金が引き出せなくなる → 介護費用の支払いが難しくなる
不動産の売却ができない → 自宅を売って介護資金を捻出できない
遺産分割協議ができなくなる → 相続手続きが長期化

特に、不動産が絡むケースでは、認知症の親の意思が確認できないと、売却や名義変更ができず、相続手続きがストップしてしまうことがあります。

📌 ケース1:「親名義の自宅が売却できない!」

🔹 状況

  • 90歳の母が認知症を発症し、介護施設に入居
  • 施設の費用を捻出するため、自宅を売却しようとする
  • しかし、不動産の名義は母のまま

🔹 問題点

  • 母が認知症のため、「売却の意思確認」ができない
  • 売却手続きを進めるには成年後見制度を利用する必要がある

対策
事前に家族信託を活用すればスムーズに資産管理が可能
成年後見制度を利用すれば売却可能だが、手続きに時間がかかる


3. 認知症になる前にできる対策は?

親が認知症になる前に、以下のような対策を講じておけば、スムーズに相続手続きが進められます。

① 家族信託の活用

「家族信託」を利用すると、認知症になった後も資産を管理できる!

🔹 家族信託とは?
親が元気なうちに、子どもを「受託者」にしておくことで、将来、親が認知症になっても、子どもが親の財産を管理・運用できる仕組みです。

📌 家族信託のメリット
✅ 認知症になっても、子どもが不動産や預金を管理できる
✅ 介護費用が必要になったら、不動産を売却して資金を確保できる
✅ 成年後見制度よりも柔軟に資産を活用できる

📌 家族信託のデメリット
❌ 一度設定すると、自由に変更できない
❌ 専門家に依頼する必要がある

「将来、親が認知症になったら困るかも…」という方は、早めに家族信託を検討しましょう!


4. 成年後見制度とは?

すでに認知症になってしまった場合、家族信託は使えません。
この場合は、「成年後見制度」を利用することになります。

成年後見制度とは?

成年後見制度は、認知症などで判断能力が低下した人に代わり、財産管理や契約手続きを行う制度です。

📌 成年後見人ができること
✅ 預貯金の管理・引き出し
✅ 不動産の売却
✅ 遺産分割協議への参加など

しかし、成年後見制度は柔軟性がなく、手続きが煩雑であるため、デメリットも多いです。


5. 成年後見制度を利用すると相続手続きはどう変わる?

親が亡くなった後、成年後見制度を利用していると、相続手続きにも影響が出ることがあります。

📌 ケース2:「相続人全員が合意しても、遺産分割ができない!?」

🔹 状況

  • 認知症の父が成年後見制度を利用中
  • 父が亡くなり、兄弟で遺産分割を協議
  • 長男と次男は「長男が自宅を相続し、次男が預金を受け取る」ことで合意

🔹 問題点

  • 成年後見人が「公平性を確保するため、自宅を売却するべき」と主張
  • 結果として、相続人の意向に関係なく、自宅を売却することに…

解決策
成年後見制度ではなく「家族信託」を活用する
遺言書を作成して、相続人の希望を明確にしておく


6. 認知症になったら、相続対策はできない?

「親が認知症になったら、もう相続対策はできないの?」

➡ まだできることはあります!
以下の方法を活用すれば、認知症になってもある程度の対策が可能です。

① 成年後見制度の申し立て

親の財産管理を行うために、家庭裁判所に申し立てをする

  • メリット: すぐに財産を管理できる
  • デメリット: 柔軟な資産活用ができない

② 遺言書が残っているか確認する

親が元気なうちに作成した遺言書があるか確認

  • 遺言書があれば、相続のトラブルを防げる

③ 生前贈与を検討する(判断能力が残っている場合)

まだ判断能力があるうちに、子どもへ財産を移転する


7. まとめ

親が認知症になると、相続手続きは大幅に複雑になります。
そのため、事前の準備が非常に重要です。

認知症になると起こる相続手続きの問題

  • 預金が引き出せなくなる
  • 不動産の売却ができない
  • 遺産分割協議が進まない

認知症になる前にできる対策

  • 家族信託を活用して、柔軟に資産を管理する
  • 遺言書を作成して、希望を明確にしておく

「まだ大丈夫」と思っているうちに、早めの対策を進めましょう!
認知症対策・相続対策について、詳しく知りたい方はお気軽にご相談ください!